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岐阜地方裁判所 昭和40年(わ)102号 判決 1969年12月22日

本店所在地

大垣市犬ケ淵町一〇一番地

株式会社 吉田ハム

右代表取締役

松岡弘

本籍

岐阜県養老郡養老町泉町二二九番地

住居

大垣市高屋町一丁目一八番地

会社役員

松岡弘

大正一一年二月二七日生

右の者に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官山岸赴夫出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告会社を

判示第一の罪につき罰金三〇万円

同 第二第三の罪につき罰金五〇〇万円

被告人松岡弘を懲役八月及び

判示第一の罪につき罰金一〇万円

同 第二第三の罪につき罰金五〇万円

に各処する。

被告人松岡弘が右各罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

被告人松岡弘に対しこの裁判判定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社は、岐阜県養老郡養老町泉町二二九番地(昭和四〇年一月四日現在地に変更)に本店を置き、ハム、ソーセージ、ベーコン各種製造加工販売及び精肉の販売を目的とする資本金二〇〇万円(昭和三七年四月に八〇〇万円、同三八年九月に一、二〇〇万円に増資)の株式会社であり、被告人松岡弘は、被告会社の代表者で、同会社の業務を統轄掌理しているものであるが、右会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を簿外し、或いは公表帳簿に嘘を書いて所得を少なく見せる等の不正な方法により、

第一、昭和三六年四月一日から同三七年三月三一日までの事業年度における被告会社の所得金額が五、三二四、〇七四円であり、これに対する法人税額は一、九六四、九九〇円であるのにかかわらず、昭和三七年五月三一日所轄養老税務署長に対し、同事業年度の所得金額が一、二一八、七〇六円にして、これに対する法人税額が四四四、〇四〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、よつて被告会社の同事業年度における法人税額一、五二〇、九五〇円を免れ、

第二、同三七年四月一日から同三八年三月三一日までの事業年度における被告会社の所得金額が四八、四六三、一五二円であり、これに対する法人税額は一八、三四七、〇六〇円であるのにかかわらず、同三八年五月二八日所轄養老税務署長に対し、同事業年度の所得金額が一、三〇〇、四〇五円にして、これに対する法人税額が四六〇、二二〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、よつて被告会社の同事業年度における法人税額一七、八八六、八四〇円を免れ、

第三、同三八年四月一日から同二九年三月三一日までの事業年度における被告会社の所得金額が四三、八一四、七五六円であり、これに対する法人税額は一六、五四九、五八〇円であるのにかかわらず、昭和三九年五月三〇日所轄養老税務署長に対し、同事業年度の所得金額が一、二三九、四三一円にして、これに対する法人税額が四〇九、〇〇〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、よつて被告会社の同事業年度における法人税額一六、一四〇、五八〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一、登記官作成の登記簿謄本

一、大垣税務署長作成の証明書(六通)

一、大垣共立銀行本店営業部作成の定期預金証明書、普通預金元帳写(三通)、通知預金記入帳控、通知預金記入帳写(二通)

一、東海銀行大垣支店作成の定期積金元帳写(三通)、自動継続扱定期預金元帳写(六通)普通預金元帳写((二通)普通預金定期預金証明書

一、大垣共立銀行大垣駅前支店作成の普通預金元帳写

一、大垣共立銀行大阪支店作成の振替収入伝票写

一、東海銀行三宮支店作成の普通預金元帳写

一、大垣信用金庫郭町支店作成の自動継続定期預金元帳写

一、奥田武三作成の上申書

一、松岡登作成の上申書(三通)、同人の大蔵事務官に対する質問てん末書(三通)及び検察官に対する供述調書(添付の同人の上申書七通と奥村堂至の上申書一通を含む。)

一、杉政滋雄作成れ上申書

一、松岡礼子作成の上申書及び同人の大蔵事務官に対する質問てん末書(二通)

一、山中穣の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、山口隆雄の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、吉田峰子の大蔵事務官に対する質問てん末書及び同人の検察官に対する供述調書

一、松岡時子の大蔵事務官に対する質問てん末書及び同人の検察官に対する上述調書(添付の上申書二通を含む)

一、岸本吉雄の大蔵事務官に対する質問てん末書(三通)

一、大蔵事務官作成の調査報告書

一、第八回公判調書中証人村出美賀の供述記載

一、山一証券株式会社名古屋支店作成にかかる松岡弘名義の保護預り保証金及び同代用有価証券勘定元帳写、信用取引委託保証金内訳帳写

一、右同作成にかかる成田幸之助名義の保護預り有価証券名細簿写、顧客勘定元帳写、(二部)、信用取引顧客勘定元帳写、信用取引顧客勘定内訳帳写、保証金及び同代用有価証券勘定元帳写、信用取引保証金勘定元帳写、信用取引委託保証金内訳帳写

一、野村証券株式会社名古屋支店作成にかかる松岡弘名義のお預り証券明細写、顧客勘定写

一、右同作成にかかる松岡登名義のお預り証券明細写、顧客勘定明細写

一、右同作成にかかる岡本肇名義のお預り証券明細写、顧客勘定元帳写、信用取引顧客勘定元帳写、信用取引保証金明細帳写

一、右同作成にかかるモリタエイジ名義の顧客よりの預り金勘定元帳写

一、右同作成にかかるマツオカイチロウ名義の顧客勘定元帳写

一、右同作成にかかる岩佐徳郎名義のお預り証券明細写、顧客よりの預り金元帳写、信用取引顧客勘定元帳写、発行日取引明細帳写

一、右同作成にかかる長谷川満名義のお預り証券明細写、有価証券預り記入帳写、顧客よりの預り金元帳写、顧客よりの預り金勘定元帳写、(二部)、顧客勘定元帳写、信用取引顧客勘定元帳写、信用取引保証国明細帳写、発行日取引明細帳写

一、右同作成にかかる太田ハシメこと太田一名義の保護預り有価証券明細簿写、顧客勘定元帳写、信用取引顧客勘定元帳写

一、右同作成にかかるカナイトミオこと金井富夫名義の保護預り有価証券明細簿写、顧客勘定元帳写、信用取引顧客勘定元帳写(二部)保証金及び同代用有価証券勘定元帳写

一、右同作成にかかる堀田佑一名義の保護預り有価証券明細簿写、顧客勘定元帳写、信用取引顧客勘定元帳写(二部)信用取引顧客勘定内訳帳写、信用取引保証金勘定元帳与、保証金及び同代用有価証券勘定元帳写

一、右同作成にかかる後藤伸名義の保護預り有価証券明細簿写、顧客勘定元帳写、信用取引顧客勘定元帳写、信用取引顧客勘定内訳帳写、預り金勘定元帳写

一、右同作成にかかる松岡洋司名義の顧客勘定元帳写、保護預り有価証券明細簿写

一、右同作成にかかる大山ノボル名義の保護預り有価証券明細簿写、顧客勘定元帳写

一、右同作成にかかる湯浅コウノスケこと湯浅幸之助名義の保護預り有価証券明細簿写、顧客勘定元帳写、信用取引委託保証金内訳帳写、信用取引顧客勘定内訳帳写、

一、右同作成にかかる湯浅幸之助に関する買付代金及び売却代金の入出金確認書

一、右同作成にかかる証明書

一、右同作成にかかる星野秀雄名義のお預り証券明細写、顧客よりの有価証券明細簿写、顧客勘定元帳写

一、同作成にかかる山岡利夫名義のお預り証券明細写、顧客勘定元帳写、信用取引顧客勘定元帳写、信用取引保証金明細帳写、発行日取引明細帳写

一、日興証券株式会社名古屋支店作成にかかる大川幸一名義の預り金お得意様カード

一、大垣市住宅協会長作成の証明書(二通)

一、大垣市長作成の証明書

一、大蔵事務官作成の未払事業税計算書

一、翠健造の検察官に対する供述調書

一、奥村堂至の大蔵事務官に対する質問てん末書(四通)及び検察官に対する供述調書(三通)

一、第四、五、一四回各公判調書中証人奥村堂至の供述記載及び同人作成の上申書(昭和四二年六月九日付)

一、第一一、一六、一七回各公判調書中証人松岡登の供述記載

一、第六、第一七回各公判調書中被告人松岡弘の供述記載

一、被告人松岡弘の大蔵事務官に対する質問てん末書(七通)及び検察官に対する供述調書(二通)

一、押収してある会計振替伝票綴五冊(昭和四〇年押第八四号の一乃至五)

一、同社員売伝票綴 九冊(同六乃至一三、二〇)

一、同<秘>決算書綴 (同一四)

一、同実地棚卸表綴 (同一五)

一、同賃金台帳二冊 (同一六、四二)

一、同売掛金補助簿 二冊(同一七、三四)

一、同買掛金補助簿 (同一八)

一、同一般管理費販売費元帳 (同一九)

一、同食堂関係支払明細書綴 (同二一)

一、同棚卸表 (同二二)

一、同決算書 (同二三)

一、同元帳 四冊(同二四、二五、二八、二九)

一、同総勘定元帳 二冊(同二六、二七)

一、同一般管理費補助元帳 (同三〇)

一、同一般管理費営業外費用収益補助元帳(同三一)

一、同売掛金台帳 二冊(同三二、三三)

一、同労務費製造経費元帳 (同三五)

一、同労務費製造経費補助元帳( (同三六)

一、同買掛金元帳 (同三七)

一、同買掛金補助簿 (同三八)

一、同賄費仕入先補助簿 (同三九)

一、同金銭ノート一冊 (同四〇)

一、同メモノート一冊 (同四一)

(1)  簿外経費について、検察官の主張する被告会社の昭和三八年三月期の簿外経費二六、六四〇、八八七円、同三九年三月期の同三五、五〇七、二三七円について、弁護人は、少なくとも前者は三九、一四〇、八八七円、後者は四八、〇〇七、二三七円以上であつたというのである。松岡弘の大蔵事務官に対する質問てん末書(昭和四〇年二月二三日付)によると、同人は、昭和三七年三月期に一、〇〇〇万円、同三八年三月期に二、〇〇〇万円、同三九年三月期に一、四〇〇万円の手持現金を会社の経費に使つていることが認められるし、又前掲各証拠殊に大蔵事務官村田美賀作成の調査報告書第八回公判調書中証人村田美賀の供述記載によると、右各期において、被告会社に入金しながらその使途の明らかでない現金と、被告会社より出金しながらその出所の明らかでない現金とがあり、その差額のうち、昭和三七月三月期六、四三四、六四一円、同三八年三月期六、七九〇、三〇三円同三九年三月期二二、四八九、八五五円は会社の経費として費消されたと推認するのが相当である。そうだとすれば、会社の簿外経費は、昭和三七年三月期一六、四三四、六四一円、同三八年三月期二六、七九〇、三〇三円同三九年三月期三六、四八九、八五五円であつたと認められるから、検察官の主張する簿外経費は、昭和三七年三月期において一八〇、三一〇円、同三八年三月期において一四九、四一六円、同三九年三月期において九八二、六一八円だけ過少というべく、従つて右金額の範囲で弁護人の主張は是認できるといわなければならない。右以外についても、第一一回公判調書中証人松岡登の供述記載、第一七回公判調書中被告人松岡弘の供述記載中には、弁護人の主張に添う部分があるけれどもそのまま信用することはできず、他に右認定を左右するほどの証拠はない。

(2)  家賃収入について、弁護人は、被告会社が昭和三九年三月期の決算において利益に計上している家賃収入金二五七万一、一八八円は、被告会社が岐阜ストア大垣店より、大垣市郭町一丁目一〇六番地の二、二四九番地の三、三丁目五〇、五一、五二番地所在鉄筋コンクリート造陸屋根四階建居宅兼店舗の賃料として受領したものであるところ、右建物は松岡登に使用、収益権があつたのであるから、賃料も当然同人の所得とすべきであつたのに、誤つて被告会社の所得としたのであるから、被告会社の右期の利益よりこれを控除すべきである。と主張する。第一一、一六、一七回各公判調書中証人松岡登の供述記載、第一四回公判調書中証人奥村堂至の供述記載、同人作成の上申書、大垣市住宅協会長作成の証明書(二通)、大垣市長作成の証明書、押収してある総勘定元帳(証一九号)、一般管理費及び販売費営業外収益費用勘定元帳(同三一号)によると、右建物は、松岡登が、昭和三七年三月大 市住宅協会との契約に基き、住宅金融公庫よりの借入金などで建築したもので、借入金などの償還が終るまで建物は大垣市住宅協会の所有になつていたけれども、松岡登において使用収益できたため、同人がこれを岐阜ストア大垣店に賃貸し同人の依頼により、被告会社でその事務一切を処理しているうち、昭和三八年九月より、受領した家賃を誤つて被告会社の所得に計上する一方、住宅協会に対する償還金も被告会社の計算において支払うようになり、かくて、昭和三九年三月期には合計二、五七一、一八八円の家賃を被告会社の所得として受領し、合計八九八、五九〇円の償還金を支払つたことが認められる。そうだとすれば、検察官の主張する被告会社の昭和三九年三月期の利益から右二、五七一、一八八円を、又損失から右八九八、五九〇円をそれぞれ控除するのが相当である。

(3)  未納事業税について、以上(1)(2)で認定した事実から、検察官の主張する被告会社の昭和三七年三月期の利益六、三六五、八八六円は六、一八五、五七六円に、同三八年三月期の利益五〇、六八六、七七四円は五〇、五五八、九八八円にそれぞれ減少し、その結果、被告会社の昭和三八年三月期の未納事業税六〇二、〇二〇円は五八〇、三九〇円に、同三九年三月期の同税五、九〇五、三七〇円は五、八九〇、〇三〇円となることが明らかである。

(4)  右(1)(2)(3)以外の被告会社の損益については、検察官主張の事実をそのまま認めることができる。そして以上認定した事実によれば、本件各年度における被告会社の脱税額は別紙計算書記載のとおりとなるので、判示のとおり認定する。

(法令の適用)

被告人松岡の判示第一の所属は、法人税法(昭和四〇年法律三四号)附則一九条、法人税法の一部に改正する法律(同三七年法律四五号)附則一一項により、右各法律による改正前の法人税法(昭和二二年法律二八号旧法人税法)四八条一項に、同第二、第三の各所為は、前掲法律附則一九条により、同法律による改正前の法人税法(昭和三七年法律四五号による改正後の旧法人税法)四八条一項に各該当するので、所定刑中懲役と罰金を併科することとし、更に同被告人は、被告会社の代表者として、被告会社の業務に関して、判示各違反行為をしたのであるから、旧法人税法五一条一項により、被告会社に対しても同法四八条一項所定の罰金刑を科すべきところ被告人らの判示第一の罪の罰金刑については、昭和三七年法律四五号による改正前の旧法人税法五二条本文を適用し所定罰金額内において、被告人松岡を判示第一の罪につき罰金一〇万円、被告会社を判示第一の罪につき罰金三〇万円に各処し、判示第一の罪の懲役刑及び判示第二、第三の罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については前掲旧法人税法五二条但書。刑法四七条本文一〇条を、罰金刑については同法四八条二項をそれぞれ適用して法定の加重をし、その刑期若しくは罰金額の範囲内で、被告人松岡を、懲役八月及び判示第二、第三の罪につき罰金五〇万円に、被告会社を判示第二、第三の罪につき罰金五〇〇万円に処し、刑法一八条により、被告人松岡が右各罰金を完納し得ないときは金一万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置し、同法二五条一項により、同被告人に対しこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 塩見秀則)

脱税額計算書

自 昭和36年4月1日

至 昭和37年3月31日

<省略>

脱税額計算書

自 昭和37年4月1日

至 昭和38年3月31日

<省略>

<省略>

脱税額計算書

自 昭和38年4月1日

至 昭和39年3月31日

<省略>

<省略>

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